フェスティバル日記


6:45 集合

 午前6時40分。日がようやく昇りかけてきた頃。
 会場へなんとか到着して、とりあえず人がいた屋内に入りました。

 …予想通り、私の知っている人はいませんでした。
 それもそのはず、私は東区に住んでいて、この日初めて野並に来たのです。
 今回のフェスティバルのことは水害ボランティア本部でお世話になった方から伝え聞きいたのです。
 「水害はまだ終わりを迎えていない。」
 「今、自分ができることはないのだろうか…。」
 そう思って、半ば無理を通させてもらってフェスティバルに参加したのです。
 とはいえ…そんなたいそうなことが言えるほど、自分は能力を持っていない…。
 会場に近づけば近づくほど、その動揺は強いものとなってきました。
 …でも、その動揺は、ちょっとした会話で消えてしまったんです。

 「さあ…私も知っている人いないからねぇ。」
 私が顔と名前だけ知っている知人の名前を、ボランティアでいらしていた女性の方に聞きました。
 私は、そこで一人でいることを恐れていたのでした。
 しかし、その女性の方はそう答えてくれました。

 …その答えを聞いて、なんだかすっ、っと楽になりました。
 自分が今まで参加してきた中で、学んだ教訓が思い出されたからです。
 『匿名空間では、人間性のみでやっていける。』
 つまり、人が長い間同じ所にいるとできてしまう人と人とを分ける『壁』というものは、誰もが誰もの顔も名前も知らない空間では存在しない。そして、その空間では、本当の意味でのその人の『人間性』が事を左右するのだ、ということです…って何いってんだろ自分。

 誰もが他の人のことを知らないときは、お互いに躊躇してしまう。
 でも、自分と相手は、同じ気持ちを持っているからこそ、そういう風になってしまう。

 勇気を出して、こちらから橋を渡していこう…。
 そして、フェスティバルに来てくれる人たちに、そして他のがんばっているボランティアのみんなに、一番最良なフェスティバルを。

 まったく小さな自分です。
 でも、蟻さんのように、小さくても最大限の努力を… 

 そんなことを考えた、6時40分でした。

(文:水野みなと)

 

 
 



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