フェスティバル設立趣旨

「ワクワクボランティアの会」 設立の趣旨
(会からの各関係先への協力依頼メールを掲載しました)


拝啓 時下 ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 突然のお便りをお許し下さい。小生は緑区でクリニックを開業している谷口と申します。

この度、別紙のように平成12年12月23日(土曜日)、天白区にある東名自動車学校の施設をお借りして「ワクワクフェスティバル」と銘うって水害被災者に向けた催しを行う運びとなりました。貴社におかれましてはこのフェスティバル開催の趣旨をご理解賜りまして、貴紙の紙面にお取り上げいただき、広く報道されますようにお願い申し上げる次第でございます。

以下、ここに至った経緯についてお話しします。

9月11日の集中豪雨で自宅の1階部分が水没し、避難所生活をしていた5歳の男のお子さんが9月下旬に当院を受診した際、お母さんから「おもちゃや文房具が全部水に浸かって、避難所生活では遊び道具もなく、子どもは気持ちが沈んで元気がなかったり、イライラしたりストレスがたまっているようです。」とのお話でした。

クリニックにあった少しばかりのおもちゃと文房具を差し上げたところ、非常に喜ばれ、あとでお渡しした紙と鉛筆に非常にたどたどしい字でしたが「せんせい ありがとう」と書いた礼状をいただき、お母さんからも「この子もすごく嬉しかったようです。」と感謝されたのです。

これがきっかけで私は、この程度のことでこんなに喜ばれるのなら、被災した子どもたちに、何かもっと喜んでもらえることはできないかと考えました。

 最初は野並地区で指導的な役割を担っている方々に話を持ちかけたのですが、災害に伴いおびただしい地域の仕事があり、またご本人達が被害の当事者であり、心身ともに疲労していることなどの事情により協力を得ることが困難でありました。

そこで私は独自に地域の皆さんに働きかけましたところ、11月30日に野並地区の主婦を中心にしたボランティアグループ「ワクワクボランティアの会」を結成することができ、「水害復興ワクワクフェスティバル」の実行委員会を立ち上げました。このメンバーは全て過去にボランティアの経験を持ったことがなく、フェスティバルついて全くの素人です。しかし、地域の参上を目の当たりにされ、地域の人のためになるのならと、共感をしていただいたものです。 

ところで、今回のフェスティバルですが、バザーや炊き出しを中心とした内容になっていますが、生活用品や食事を提供すること、あるいは、それらの売上金を被災された人のための義援金に当てる収益を目論んでいるものではありません。

小生は、医師としてこれまでの経験から、治療行為とは医者が患者を一方的に指導、教育、管理するものではなく、実は医者と患者の双方向性によって形成される「治療の場」が病気を治していくものと考えています。そして、治療行為において患者と医者とによって構成される「場」の調整が重要であると考えています。

こうした場を共有しますと、病気を治してやろう、病気を治してもらおうという関係から「生きている実感」を共有する関係に発展します。こうした場は投薬、注射、処置などの治療行為を行う施設の中にとどまるものではありません。地域というフィールドに出て、明るくさ、元気、勇気、夢、希望を提供し、明日への活力を生み出すことができたとしたら、それはりっぱな医療行為であり、予防医療でありうると考えています。

今回、被災をされた方について申しますと、確かに物理的な復旧は急ピッチに進んでいます。しかし、前に申し上げました子どものように、多くの方が自分の大切にしていたものをこの水害により失ったと思います。それは、新しい物を手に入れたからといって癒されるものではないように思います。被災者の方がふと力を落とされている姿が目に浮かびます。私は「生きている実感」の共有こそが被災された人々への真の支援活動になると考えています。それは、ちょうどガス欠の自動車にガソリンを給油すると走り出し、なくなると動かなくなるのに似ております。被災者にとっても、お金と物も重要であることには、病人に薬剤や注射が有効であるのと同様ですが、こうしたものは一時しのぎにしか過ぎない対症療法であるということを忘れてはなりません。

私たちは「ワクワクフェスティバル」でバザー用品、暖かい食べ物を提供しますが、これはあくまでも人と人をつなぐ、道具、手段のつもりです。気持ち、心を伝えるのに贈り物という形を借りたほうが伝え易いのと同様です。今回のフェスティバルの目的は、物という道具を使いながら、できるだけ楽しく人々が交流する場を設けました。

人が集い、出会い、交わり、そしてそれによって生まれる輪が新たなエネルギーとなり、被災した人も、被災していない人も、男も女も、子どもも老人も、フェスティバルに集う全ての人々の、心の中に「何か」が生まれ、明日への糧としてもらえたらと思います。私はこの計画に文字どおり「ワクワク」しています。

さらに付け加えますと、実行委員会の立ちあがりからフェスティバル当日まで、約3週間という短い期間なのですが、このプロジェクトを準備してゆく過程そのものが支援活動の一環であり、その過程を通じて被災された人々、被災を免れた人々、それぞれが立場を越えた地域の輪、和、コミュニケーションやネットワークを広げたいと思います。

最後に、改めてお願い申し上げます。

貴社におかれましては、是非、バザー用品や人手の提供、そして当日のフェスティバルには多数の参加されるよう呼びかけていただきたく存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

                                 敬具

水害復興ワクワクフェスティバル主催 

ワクワクボランティアの会 代表  谷 口  和 人

 
 



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