URLリストを製作して

 このリストは、インターネットを使って如何にたくさんの市民活動が展開されているかをお知らせし、また、こうした活動がお互いに知り合い、連帯できるチャンスを設定できればと考え、作成しました。市販のインターネットイエローページに市民活動の紹介が少ないと普段から気になっていたことも、本にリストを掲載した理由の一つです。「市民メディア入門」はその適切な場だと思いました。

 このリストに関しては、お断りしておかなければならないことがいくつかあります。まず、お詫びです。あらゆる市民の活動を紹介しようと試みましたが、網羅するにはネット上の活動があまりに盛んでありました。日々刻々と増えていくようなありさまに対応仕切れず、ある一瞬に私たちが捕捉できたページの紹介にとどまっていることをお許し下さい。日本の市民が個人や団体で自発的に非営利で行っている情報発信と、現在の意見の分かれる社会問題に対する活発な議論の行われているURLをできるかぎり捕捉し(一部、海外のURLも含め)、市民活動や運動、個人のボランティアや、また時には行政や企業のページも入れています。これらの分野はこうしている間にも続々と新しいサイトが生まれています。チェックできなかった多くのページの開設者の方、申し訳ありません。また、これらのページは移転、閉鎖が頻繁に行われています。1996年9月末の時点でのURLであり、その後の変化については責任を負えないことを、お許し下さい。
 もうひとつ、すべてのページは実際に内容を拝見して紹介させていただきましたが、その運動団体の発信している情報の真偽のチェックなどは到底できるものではありませんでした。このリストを参考にそれぞれの運動にアクセスしようとする方は、各自の責任において関わって頂きたいと思います。善意によって運営されているページでも、些細な打ち込み間違いや更新されない古い情報が存在します。また、昨日あったページが今日はない、ということもままあります。また、虚偽(デマ)情報が全くない、とはいえません。玉石混交のホームページを教育リソースとして教室で用いようと考える先生方は、当該ページの団体に直接接触して信頼関係を築いた上で紹介されることをお薦めします。また、子どもたちには是非活動の現場に足を運びネットの情報を自分で確かめる機会が与えられることを祈ります。

 このリスト製作にあたって感じたことがあります。まず、マスメディアに頼らず、誰の検閲も受けないで公開された主義主張は大変活気があるということです。そして思いきり「偏向」していてわかりやすい。その一方で「偏向しない?」マスメディアがとてもわかりにくいものだという気がしました。極端な反対意見を両方目にできれば、取るべき意見を自分で考える手がかりになるでしょう。
 また、ここでは女性も男性も、若者も年配の方も、国籍や障害などさまざまな異なる背景を持った人たちが互いに何のハンディもなく対等に意見や情報を提示しています。しかもその意見や情報の「中味」だけが評価の対象です。声の小さな人も不利を被らない公平さが新鮮です。

 ただ、その公平さには限界があります。市民がホームページを開設するための条件、それらを見るための条件は、今のところ全く不公平だからです。高い通信費、つながりにくいプロバイダー、複雑なコンピューター操作、そうしたことを考えると、日本のインターネットはまだ総ての市民に開かれた言論の広場とは言えません。発言の機会を平等にするために、市民が端末にもっと容易に触れられるように行政や通信事業体に対して運動していかなければならないように思います。
 また、ネット上で活動する人々があらゆる検閲や規制を自ら阻止できなければ、この広場で語ることは無意味です。その中で、今回検閲に抗議する黒地の画面とブルーリボンのついたホームページを多く見ました。ネット上の自由を守るための運動は、着実に拡大しています。

 たくさんのページを見ていて、こうしたネット上の活動に日本人の「顔」が見えはじめたような気がしました。意思を持ち、創造的にかつ論理的に表現し行動する様々な市民の顔です。またコンピューターに向かう多くの人が「現場」を持っていて、決して日常が「キカイ」に支配されてはいないことも頼もしい。多様な意見がネット上でぶつかりあっていること、またリンクし合っていることに、お仕着せでない民主主義を探しはじめた日本人の前向きな葛藤?が見えはじめたように感じます。決して「流行の」インターネットとして飛びつくのではなく、「信じる」「信じない」「発表する」「発表しない」・・・このような葛藤を繰り返しながら日本の電子空間も独自の広がり方をしてゆくことと思います。

 作成過程で、ホームページを開設している管理者の方々に連絡を取らせていただきましたが、限られた時間の中でお問い合わせに応えることが十分にできませんでした。また、切り詰めた字数の中で紹介させていただいた活動の記述は、それぞれの発信者の方の本意としておられることと多少離れてしまったこともあります。どうか、そのあたりをお汲み取り下さって、いろいろな活動団体との情報交換やネットワーク作りにこのリストを活かして頂ければ、と思います。
 なお、私たちは、今後もこのリストの補充を続け、折を見てまた活字で発表させて頂きたいと思っています。新しくホームページを開設した、という市民運動関係者の方は是非、下記まで URLをお知らせ下さい。

murase@iname.com

 また、こうした市民サイトを支える多くの方は大学に籍をお持ちの方でした。どうか、卒業されたり移籍される時は、移転先にリンクして下さるか、できましたらURL変更通知を下さいましたら幸いです。

  リスト作成

murase@iname.com